21日の朝刊に、たくさんの管や人工呼吸器を付けている女性の写真がありました。テレビを付けると、あらゆるニュース番組で彼女が遭った事故の話を長く取り上げていました。それを見たタイママをはじめ、タイの家族全員が怒りを露にしていました。
これは軍関係者が故意に起こしたと思われるひき逃げ事件なのですが、ニュースが明るみになったのが事件発生から10日後。被害者である、医師の女性は今も意識が戻らないままです。
目撃者は医師の母、そして交通カメラが一部始終をしっかり捕らえていた。また、女性を轢いたほうの車には、当事者の軍関係者と奥さん、子供が同乗していたらしい。
バンコク週報WEB版より
『プラモンクット病院の女性医師がひき逃げされて重傷を負い意識不明となっている問題で、医師の家族が、「空軍関係者の関与した事件であるため、警察に圧力がかかり、捜査が進んでいない」と訴えている。
ハタイポン医師(34)の母親によれば、6月11日午後9時ごろ、医師が車を運転してバンコク都パヤタイ区ラマ6世通りの自宅に戻ったところ、駐車中の乗用車が道をふさいでいた。
そのため、医師は、近くのレストランの客の車と思い、ナンバーを控えてレストラン側に車を移動するよう伝えていったん自宅に入った。しばらくして外に出てみると、その車はまだ路上にあったという。
その後、医師が自分の車に乗り込もうとしたところ、その車は警笛を鳴らしながら急発進し、医師をはねて逃走したとのことだ。現場には衝撃でとれたとみられるワイパーが1本落ちていた。運転していたのは服装から軍人とみられるとのことだ。
警察では、ナンバーを手がかりに車が空軍本部所有であることを確認。捜査官が本部に出向き、証拠物件として車の提供を求めたが、警備の兵士に拒否されてしまった。
しばらくして車が警察に運ばれてきたが、医師の母親によれば、フロントガラスのステッカーの数が異なり、さらにワイパーが2本ともあったことから、ひき逃げに使われた車ではないとのことだ。
関係筋によれば、車を運転していたのは、空軍から車を借り受けていた退役軍人の息子(中佐)の可能性が高いとのことだ。』
その後、昨日になって車を運転していた大佐が警察に出頭。
Newsclipウェブ版より
『タイのテレビ報道によると、6月11日夜、バンコク都内の路上で軍医の女性ハタイポンさん(34)がタイ陸軍所有の乗用車にひき逃げされ、重体となった事件で、車を運転していたタイ陸軍のサクシット大佐が21日、警察に出頭した。大佐は殺意を否定し、事故だったと主張。警察は逮捕を見送り、事情聴取後、大佐を帰宅させた。
ハタイポンさんの母親で医師のパラコンさん(70)によると、ハタイポンさんとパラコンさんは事件当日、ハタイポンさんの勤務先から自家用車で帰宅したが、自宅の駐車場前に乗用車が止めてあったことから、近くのレストランに持ち主を探して車を動かすよう頼んだ。その後、酒に酔った様子の男がレストランから現れ、乗用車に乗り込んで発進し、自分の車に乗ろうとしていたハタイポンさんをはねた。乗用車はそのまま逃走した。ハタイポンさんは病院に運ばれ、2度の開頭手術を受けたが、21日になっても意識不明のまま。
サクシット容疑者は取り調べに対し、「レストランで家族で食事をし、帰宅しようとした際に、駐車マナーをめぐりハタイポンさんと口論になった」「車を発進させたところ、ハタイポンさんがボンネットに乗ってワイパーをつかみ、バックしたら下に落ちた」などと話している。
タイ陸軍のプラユット司令官は21日、この事件について、陸軍による組織的隠蔽はないと主張した。ただ、陸軍は犯行に使われた乗用車の警察による調査をいったん拒否し、20日になってこの車を警察に送り届けるなど、捜査に非協力的な姿勢をみせていた。』
この大佐は、レストランを出たところ医師の車が道路をふさいでおり、家族で動かそうとしたらギアがニュートラルに入っておらず困っていたところ、医師が家から出てきて口論となった、そしてその後車を出すときに医師が車のボンネットに乗ってきたのでブレーキを掛けたら車から落ちた、と話しているそうです。しかし、この証言は交通カメラが捉えていた事実と一致しないことから、今後も警察による取調べが続くとのこと。
しかし、事件発生から10日も経って表沙汰になるなんて、どう考えても軍側が隠蔽していますよね。タイでは権力のある人が、その力を使い間違えることがよくありますが、人の命の大切さをまずはわかってほしいものです。実に許せない事故です。