洪水被害 45

今回の洪水は、あちらこちらで住民同士の諍いを勃発させています。我が家でも、最初の浸水のときに「どうして家の前の通りはくるぶしまで水が来てるのに、裏の通りはカラカラなんだろう」と思いましたが、地表と地下のわずかな高低差で運命が分けているようです。

これがもう少し規模の大きい話になると、あるポイントを境に浸水しているエリア、まったく水がやってこないエリアとに分かれ、それを左右するのは高低差のほかに、水門の開き具合などが関わってきます。

膝レベル.JPG現在我が家は避難中ですが、昨日旦那と二人で荷物を取りに一度家に向かいました。500戸以上の家が立ち並ぶ大きな住宅街なのですが、ゲートの深さは大人の腰くらい。入り口にある守衛室は放置され、守衛さんの姿は見えませんでした。どこの家も避難してるのだろうと、徐行運転で中に入って行くと、まだけっこう住民が残っていました。

どの家も門の前に高く土嚢を積んでいますが、すでに駐車場が水浸しの家も多く、2階で生活しているようです。それでも子供が自転車で遊んでいたり、無理やりバイクで走っている人がいたり、ピックアップトラックで住民を市内へ輸送するのを買って出ている人がいたり。我が家は「外部との遮断」を恐れて避難に踏み切りましたが、電気水道が使えて、食料の確保がある限りは動かないというお宅も多いようです。

水をたぷたぷ言わせながら家の前に到着し、早速お向かいの奥さんと話をしました。

「おとといね、住宅街から幹線道路に出る道で銃声が鳴り響いたのよ。」

え??耳を疑いましたが、こういうことだったようです。

たぷたぷしてる.JPGその道は、道路自体はきれいに舗装されているのですが、ある一部が低くなっているようで、洪水でなくともちょっとした大雨でも水がたまりやすいポイントがあります。その部分に洪水が広がり出したころ、住民が勝手にスピードバンプを大きくしたような、むしろちょっとした山と言ったほうがよさそうなものを、コンクリートで作りました。

これを境に片方は浸水を見事免れ、もう片方は完全に水浸し状態となりました。本来、道路にこういったものを勝手に施すのは禁じられているのでしょうが、これでは家が飲まれると焦った付近の住民の誰かが夜中にコンクリートを積み上げてしまったとのこと。

このバンプを境にして住民同士のいがみ合いが始まり、銃声が聞こえた日というのも両者の話し合いだったそうです。結局「3日以内に撤去」で話がまとまったそうなのですが、浸水した側の住民がその約束を取り付けるために威嚇発射したらしいのです。

あんな穏やかな郊外の地で銃声、、、恐ろしくなります。迫りくる洪水が一番に怖い、でもそれをめぐって人が争うなんてさらに怖い。

実は今回のバンコクの洪水対策をめぐっては、タクシンを兄にもつインラック首相と、王族出身の都知事との間に溝があるとか、対立をしているとかという話があります。昨年、国民同士の争いでどれだけの人災をもたらしたのかは、首相も都知事も十分にわかっていらっしゃるでしょうが、今回の天災を人災にしないために、最善の努力をしてもらいたいものです。

土嚢屋さん.JPGさてさて、私や家族の様子を友人にメールしたりSNSに載せると、皆から「落ち着いているね」と言われます。確かにそうですね。今もこうして、避難先でカタカタとPCを叩いてるわけですからね。避難先が水に飲まれていないという事実も然りですが、私も含めてタイ人の家族全員が落ち着いているのは、きっとテレビのニュースで散々流れてきた洪水の被害状況や水害に遭った人たちの様子を見ながら「受け入れるしかないな」という気持ちになってきたからではないでしょうか。

昨日家からこちらに戻ってくる車の中から、道路で土嚢やライフベストを売っている露店や、ボートの販売もはじめた中古車販売店が見えました。その姿こそが、もうすぐそこまでやってきている洪水、或いはすでに飲まれた洪水に対する姿勢の象徴のような気がしたのは私だけでしょうか。

だって、洪水が来たって、命ある以上は生活は続いていくんだしね・・・