今日31日まで、政府が急遽発令した臨時公休日。今日までで大潮が終わることから、インラック首相も「11月第一週には水が引く」と宣言しており、明日からは通常に戻るのかとなんとなく安堵感があったりもしますが、しかしニュースを見ているとまだまだ決して安心のできる状況でないことがわかります。
週末にすでに2回堤防の一部が決壊したプラカノン運河のあるスクンビット50付近では、今朝も再び土嚢の山が崩れ、コンクリートの壁も一部破損して水が流れ出しています。けっこうな勢いがある流れが少し引いてから修復作業に入るとリポーターは伝えていました。
毎日新聞より
『タイの首都バンコクを襲っている洪水で、インラック首相は30日、都心部の大規模な洪水被害の恐れは弱まったとして、洪水対策のための31日までの臨時休日を延長しないことを決めた。タイ湾の潮位は31日以降下がり始める見込みで、首相は記者団に「あと数日、状況を見守る必要はあるが、堤防の決壊がなければ都心部は守られる」と語った。
しかしバンコク北部からは、都心部方面へ向け大量の洪水の水が南下し続けている。政府は都心部の被害を防ぐため、水を郊外のバンコク東部に誘導して海に排水する方針。首相は29日、「作業を急ピッチで行っている」と述べたが、これまでも政府の楽観的な見通しはことごとく裏切られており、水が都心部に達し洪水被害が起きる恐れは消えていない。
中心部を流れるチャオプラヤ川の流れを妨げるタイ湾の大潮は30日までとされる。この日も川からの氾濫が続いたが、左岸の都心部への浸水は限定的で、懸念された日系企業の事務所が集中するシーロム地区などへの流入は起きていない。
政府によると30日までに洪水による死者は381人、不明者は2人となった。』
インラック首相は比較的楽観的な見解ですが、バンコク都知事はもう少しシリアスに状況を見ています。
msnニュースより
『洪水被害が広がるタイの首都バンコクでは31日も、首都北部を冠水させた大量の水が中心部に押し寄せるのを防ぐため、運河や排水路を通じて西部や東部に水を拡散させる作業が続いた。スクムパン知事は30日夜、「全ての運河は安定しているが、浸水の範囲は広がっている」と説明。大潮のピークは過ぎたものの、予断は許さない状況だ。
洪水被害の悪化に対応するため、政府は27~31日までを特別に休日にし市民に避難や防災対策を促していたが、「これ以上は必要ない」と判断し、延長しなかった。東部と西部へ水を流す作業は順調に進んでいるとみられ、インラック首相も「数日で安定する」と楽観的な見方を示す。
ただ、チャオプラヤ川や運河の水位は高いままで、首都中心部の王宮前広場周辺の川沿い各地で道路が冠水している。』
大きく言うと、タイの北部中部から南下してきている洪水はを、バンコクの東西に迂回させて海に排出させることで、中心部への浸水を回避しているのが現状です。しかし、これによって東と西のそれぞれの運河付近や、場合によっては周辺一帯が洪水になる可能性は十分にあり、それぞれの思惑がぶつかり合っているようです。
昨晩も「クロンサンワー」という運河の水門を、一般市民が勝手に開けようとして、反対派の市民ともめているニュースがありました。開けようとしている人は「ここを開けないと、家が完全に飲まれてしまう」、それを阻止しているのは「ここを開けたら、家が飲まれてしまう」と、どちらに転んでも浸水被害を免れることはできません。
洪水によるいらいらは多かれ少なかれバンコクにいる人の心を蝕んでいます。私が住む近辺で最初に洪水が発生したとき、道路のほんのわずかな高低差で駐車場に水が入ってしまっている家、入らない家、水で家に入るのに敷石を高く積んでいる家、門の前の道路は乾いている家など、お向かい同士でも運命が分かれました。
そんな中、駐車場に水が入り土嚢も売り切れで買えなかった家の奥さんが、くるぶしくらいの洪水の中、じゃぶじゃぶと家の前の水を一生懸命排水溝にほうきで掃いていたのですが、排水溝も水がいっぱいで水が一向に流れていかず、いらいらしている姿がありました。裏の通りは冠水していないという状況が、更にいらいらを募らせていたのかもしれませんが、運河近くに居を構える人たちの水門を開ける開けないの攻防戦にも、それぞれの思惑や鬱積したものが出ているように見えました。
我が家も郊外ですから、バンコクの東西の運河に水を排出する作戦が進めば、再び冠水する可能性は十分にあります。これに対して、国から保障などがあるわけではありませんが、もうしょうがないという気分でいます。また、今回の運河の流れで被害を受けかねない東のラックラバン工業団地などは、土嚢をより高く積み備えているようです。