タイ人が好きな味と言えば、「辛いに限る」と思っている人は多いのではないでしょうか。答えはNO。辛いのが苦手なタイ人だっていますし、辛いだけじゃだめだという人も多い。
タイ人が好きな味、それはタイ語で「ケムコン」。日本語に訳すと、しっかりした濃厚な味付けのこと。決して味が濃いという意味ではなく、甘味、酸味、塩味、辛味の4つが上手に混ざり合い、舌にはっきりした印象を残す、そんな味がタイ人に好まれます。
一方薄味を美とする和食の良さは、一般のタイの人にはわかりづらい。素材の味を最大限に生かした料理は、タイ人の舌にかかると「ジュート(味気ない、物足りない)」になってしまいます。以前テレビの紀行番組で、あっさり出汁だけで作った野菜の煮物を食べた司会者が一言「ジュート」と言ったのには笑ってしまいました。
タイではこの「ケムコン」がやたらと好まれ、味以外にも映画の内容、化粧品の質などに対して使われることがあります。「内容充実でで飽きさせない」という意味なんでしょうが、これは日本人が好む「控えめ」の対極ですね。
日本では控えめ、謙虚、さりげなさが美徳と評価されがちですが、タイでそんな性格でいたら「ただの静かな人」で終わってしまいます。
さて前置きが長くなりました。本日のお題「タイ人とタレ」に入りましょう。
タイ人はあらゆる物にタレ(ナムチム)を付けて食べることが多いのですが、今が季節のマンゴーを見てもほとんどの場合タレが付いてきます。日本でも「スイカに塩」がありますが、あくまでもスイカの甘味を引き出すためもの。タイの場合は、タレの主張が強すぎて素材の味が消えそうなくらいしっかりしたお味となります。
熟す前の緑のマンゴーには、たいてい砂糖、塩、唐辛子(場合によっては梅の粉末)を混ぜた薄ピンクの調味料がセット。私はこれがあまり得意でない。そもそも、塩分控えめ(これも控えめを好む美徳だわ)を好む日本人にとって、形ある塩や砂糖をじゃりじゃりと口に入れることが憚られる。
酸味がきついマンゴーは、ナンプラーやパーム砂糖、唐辛子、干し海老などを煮詰めてどろどろにしたタレを付けて食べます。日本の佃煮に近い見た目と味で、むしろホカホカご飯に合わせたい。
そして、私が一番びっくりしたタレはピザにつけるケチャップ。ちなみに、この場合のピザは、スクンビットの本格的イタリアンではなく、デリバリーピザやチェーン店のピザを指してます。
日本の感覚でケチャップといえば、オムライス、ポテトフライ、フランクフルトてなところだと思いますが、タイではピザやサンドイッチにケチャップを使います。
ピザって、ピザソース、チーズ、場合によってはマヨネーズ、それからよくわからない白や茶の濁ったソースでしっかり味付けされてるものですよね。具だって盛りだくさんだし、そのままパクッといくのかと思いきや、付属のケチャップをピザに浸して食べる。まるで、日本人が寿司をしょうゆ皿にもっていくような感じで。
そんなことしたら、ピザの味がなくなるだろうし、味に種類がある意味がないと思うのですが、ケチャップを付けると味がはっきりして美味しさが増すのだそう。サンドイッチにしたって、塩を少々ならわかるけど、白いパンに思いっきり赤いケチャップって、見た目もなんかすごいことになりますよね。
ピザはもともと外国の食べ物。日本にだって照り焼きチキンピザとかあるし、タイではタイ人が好む方法でピザをいただくということです。
はっきり濃厚をケムコン味を好むタイ人。性格もケムコンな人多いしな・・・